安 田 優 子 代 表 質 問



              


一 片山知事の基本姿勢

 1 環日本海交流の取り組みと将来展望
 知事の基本姿勢の第1点目として、環日本海交流についてであります。
 明治14年8月、山陰地方を視察した明治政府高官が、時の政府の重鎮山県有朋参事に
「陸の孤島」と表した我が鳥取県でありますが、開国近代化を図る新体制においても残念な
がら日の当たる場所にはなり得ませんでした。以来、裏日本の弱小県にあって、「後進性の
打破」は言われて久しいスローガンであり、歴代知事の目指すところ、60万県民の悲願と
も言えるのであります。

 その後進性を逆手にとって、環日本海交流を推進されたのが片山知事であります。かつ
て知事が総務部長であったころ、今までは太平洋側ばかりが栄え、表日本であったが、日
本地図を逆さにしてみれば、これからは我々が表日本になっていくのだと語られるのを聞
いたことがあります。当時、私は名もなき一県民でありましたが、55年体制の終焉、ベル
リンの壁の崩壊と、時代が新しい胎動を見せている中で、その話を聞き、感激と期待で胸
高まる思いがしたことを今も覚えているのであります。

 いわば知事が提唱され、手探りで着手された環日本海交流も、開始から12年を経過し、
交流の蓄積やパイプの広がり、深まりの中で、米子〜ソウル便の航空路や国際定期航路
の開設にこぎつけたことは、大いに評価される成果であったと思います。

 そこで、知事は、これまでの努力の跡を振り返り、どのように統括されますでしょうか。そ
して、どのような将来展望をお考えでしょうか、お尋ねをいたします。

 2 地方分権推進と全国知事会
 基本姿勢の2点目は、地方分権推進、とりわけ全国知事会についてであります。
 大きく変動する国際情勢に呼応すべく、我が国が永年構築してきた国家体制にも、根底
的な改革が求められてきました。平成12年の地方分権推進一括法の制定は、硬直化、分
業化し、制度疲労が顕著になった我が国の行政システムに、初めて地方分権の道をあけ
る一大転機となりました。これによって地方団体の長は、地域住民を代表して堂々と国に
物申す権利と義務を得るとともに、地方自治が本来の主旨を実現すべく、自らの力で自ら
の地域を実現していく民主主義の基本的社会システムが確立されたのであります。

 今、地方分権を担保するための税と財政のシステムをめぐって国と渡り合う地方の代表
として、全国知事会の活躍は目を見張るものがあります。全国の知事が自らの地域を守る
ために小異を捨てて大同団結し、国に向かってひるむことなく闘う様は、まさに維新前夜を
想起させるものがあります。

 その中にあって、我が片山知事が自治省時代の経験と分権推進知事としての実績をフ
ルに発揮され,並みいる知事たちのリーダーとして、「財政調整問題研究会座長」を務めら
れるなど、その活躍ぶりに改めて力強い知事を持ったと誇りに思うものであります。

 全国知事会には、地方6団体をリードして、地方・国民の声を代表する立場から、この先
も国家再建へ向けて頑張っていただきたいと願うものですが、果たして平成の四十七士は
新国家創造の旗手になり得るのか。また、その中で片山知事はどのような役回りを果たさ
れようと思っておられるのか、抱負のほどをお聞かせください。

 3 三位一体の改革の見通しと来年度予算編成
 次に、三位一体の改革と来年度予算編成について伺います。
 11月26日、いわゆる三位一体の改革の全体像なるものが政府・与党間で決定されまし
た。その概要については、先日来種々報道されておりますので、あえて申し上げませんが、
全国知事会等地方6団体は、全体像の受け入れを決められたところであります。

 この全体像に対する私の率直な感想を申し上げますと、期待したものとはほど遠い。何
年も議論してこれだけか。これで我々地方に将来に向かって明るい希望を持てと言うのか。
すんなりとは受け入れがたいということであります。全体像であり、決定されてからまだ1週
間しかなく、詳細はこれから明らかになると思いますが、現時点での疑問、問題点を何点か
指摘してみたいと思います。

 まず1点目は、このことはこの議場でも幾度となく言われておりますが、三位一体と言い
つつ、今回も補助金削減3兆円だけが強調されている。税源移譲や地方交付税の問題は
つけ足しにしかすぎない。また、義務教育費国庫負担金に関する議論において、義務教育
を地方に任せたら教育水準が下がる、地域格差が生じるという国の主張は、地方自治の
原点、地方分権の考え方を根底から覆す暴論であり、地方不信そのもの、地方を軽視して
いる霞ヶ関の官僚の姿が映し出されているとしか思えません。

 2点目は、税源移譲分について基準財政収入額に全額算入という措置は一定の評価を
いたしますが、本県財政にとって最も重要な地方交付税について、総額の確保としかうた
われていない。加えて、地方交付税制度の大きな役割である財源保障機能について何ら
触れられていない。ここが明確にされなければ、財源の乏しい本県、そして県内のほとん
どの市町村の今後の財政運営に大きな影響を及ぼすことは避けられないのであります。

 そこで、三位一体の改革の全体像が本県財政にどのような影響を与えるとお考えなのか、
知事の御認識を伺うとともに、来年度以降の県財政運営に当たり、地方交付税等財源の
確保を含めどのような見通しを立てておられるのか、御所見を伺うものであります。

 4 鳥取県の自立とは
 次に、本県の自立についてであります。
 片山知事は、2期目の就任を期して、地方分権社会における地域の自立とそれを支える
行政改革を推進すべく、改革・自立推進本部を設置され、行動計画に基づいて鋭意取り組
まれていることは、皆様先刻御承知のとおりであります。

 「鳥取ルネッサンスの普及・推進」、「行政機能の向上」、「雇用の創出」、「自然エネルギ
ーの開発・普及」、「総合交通体系の整備」、「文化・観光振興」、「個人の自立推進」の7項
目を県政の重要課題として挙げられ、それぞれチームを編成して、県庁組織の横断的連
携を図りながら検討・実施されるシステムになっております。現下の県政の課題を大胆かつ
余すところなく網羅され、従来の総合計画には見られない斬新な切り口で検討課題に迫る
手法には、驚きと感動すら覚えるものです。このすばらしい計画をさらに充実・実効あるも
のにし、本県自立に向け、3点にわたり私見を交え知事のお考えを伺うものであります。

 (1)現場主義について
 その1点目は、現場主義についてであります。
 片山知事が1期目の就任の際、県庁職員の意識改革を図るべく提唱されたのが、県政
の透明性確保と説明責任、それに現場主義ということでありました。いずれも住民が主役
たる真の地方の時代に求められる県行政のあり方として的を得、時宜を得たものであった
がゆえに、多くの県民から支持されたのであります。

 このうち現場主義について、知事は、役所中心主義ではなく、常に現場と双方向の関係
を持って、現場における行政課題の必要性をとらえて、そこから政策を提言し、具体化す
るものと述べておられ、この理念に基づいて、鳥取県西部地震の際の住宅再建支援策や
日野郡郡民会議が生まれたものと理解しております。

 しかし、今の県の仕事の進め方を別の角度から見てみますと、1つの問題点が浮かんで
きます。地域に何か問題が生じ、住民が県に対策を求めるとき、現場に出向いてくれる人
が知事か副知事であれば、事は一気に解決するでしょうが、やはり部長以下であれば、他
の部署のことまでは責任ある対応ができないのであります。住民の立場で考えますと、まず
現場における問題解決をどこに持ち込んだらいいのかというところから始まります。加えて、
問題によっては1つの部、1つの課で事が終わらず、部署をまたいだ連携が必要であった
り、もっと総合的な施策が求められねばならないこともあります。

 県業務は全県下、全領域が対象になるため、縦割りのシステムでそれぞれの組織に役割
分割せざるを得ないでしょうが、住民の生活は県の各組織を横一線に並べた状態で成り立
っております。私は、現場主義という理念を県組織全体が具現化するには、役人的視点で
縦割り的手法で取り組むのではなく、住民、地域の視点に立っての問題解決に取り組むこ
とが第一義であると主張するものです。知事御自身が提唱され、いわば役人向けに語られ
てきたこの現場主義がはらむおう1つの側面について、どのように認識されるのか御所見
を伺います。

 (2)市町村との関係
 次に、市町村との関係であります。
 地方分権の究極の受け皿は、住民に最も近い基礎的自治体、すなわち市町村にあるこ
とは異論のないところであります。知事もまた、県政の主人公は住民であり、それゆえ市町
村行政のありよう、重要性については常々語られるところであります。住民の立場からすれ
ば、県民であると同時に市長村民でありますから、県と市町村がよきパートナーとして、力
を合わせて住民福祉に取り組んでくれることを願っております。

 さて、国に対する片山知事の姿勢については、恐れず、ひるまず立ち向かい、明快な論
理と鋭い舌鋒で批判、攻撃される姿に、県内はもとより全国から称賛の声が上がっており
ますが、一方で、県内の市町村に対してはいかがでありましょうか。以下、何点か指摘し、
知事の真意のほどを明らかにしていただき、県と市町村との関係のあるべき姿について考
えてみたいとおもうのであります。

 知事以下、県庁の基本的スタンスとして、県は頑張る市町村を応援すると表明されてお
りますが、頑張る市町村とはどういう市町村でしょうか。そして、それは頑張らない市町村
があるということを前提にした物言いでありますが、果たして頑張らない市町村が本当にあ
るのか、教えていただきたい。
 また、その振り分けは何を持って判断されるのでしょうか、知事の御所見を伺います。

 県も財政難ですが、県内市町村財政も窮乏のきわみにあります。平成十五年度決算で
見てみますと、経常収支比率の平均は86.9%、7自治体が90%を超え、最高は96.9
%にまで達しています。ここに至った原因については他の項に譲りますが、ここまで来ると
財政規模が小さい分、ただ必要最小限の事業遂行に精一杯で、やりたいことも事業に優
先劣後をつけるなどは夢のまた夢であります。やる気はあっても先立つものがない。ため
に国や県の補助事業に手も挙げられない。当然のこととして、他の自治体との間で住民
サービスに格差が生じる。今後、市町村間の行政サービス格差、ひいては市町村格差の
拡大は避けられず、深刻な事態が生じると認識するものですが、このような事態に県はど
う対応されるのでしょうか。

 現在、国の地方切り捨て策ともいえる無謀な三位一体改革に対しては、県も市町村もと
もに闘う立場でありますが、県と市町村という観点から見たとき、今後の関係はどのように
推移していくのでしょうか。県内の市町村が次々と倒れていって、県庁だけが生き延びて、
果たして鳥取県の自立と言えるのでしょうか。真の分権の受け皿たる市町村が崩壊して、
果たして本県が分権推進県として胸を張れるのでしょうか。大きな危惧を抱きつつ、知事の
御答弁に期したいと存じます。

 (3)土に立ち、海に向かって
 私は、不登校の子供たちや引きこもりの方などへの支援に取り組んでまいりました。学
校や社会に出れない状態にある人が、いつか自分の力で自分の道を歩み出してもらいた
いと願う一方で、本人やその御家族の苦悩に触れるとき、心痛むのであります。そして、一
見だれもが自由で、どこまでも可能性が追及できる機会が保障されているように見える今
の世の中でありますが、実のところ、私たちが生きる社会がいかに狭く、閉鎖的で、もろい
ものであるかを実感するのであります。

 そんな中で、個人の自立を唱える本県としては、広がる大地にしっかりと足をつけ、目の
前の果てしない海に向かってこぎ出す勇気をだれもが持つことができるような、そんな人づ
くりを目指すべきであると主張するものです。本県の恵まれた自然環境は、子供たちをたく
ましく育てるために生かされているでしょうか。豊かな自然体験を通してこそ、人は初めて
バーチャルな感性によるものではなく、自然や周りの人々とのつながりを実感し、真実、本
当のものにめぐり合うことができると考えるのです。少々の困難や挫折があっても、大きな
自然や愛でいやされることが可能な本県のメリットを、ぜひとも人づくりに生かしてほしいと
願うものであります。

 子供は土の上で育ってくださいとの願いを込めて、赤ちゃんが誕生したら、ささやかな農
地をプレゼントする、「太郎ちゃん農園・花子ちゃん農園」のような取り組みを進めるよう提
言したいと思います。そこで公園デビューならぬ農園デビューができれば、親子関係や周
りの人間関係も随分変わることでしょう。晴耕雨読で雨が降る日は親子で絵本を広げる、
そんな子育てが実践できたら、児童虐待も佐世保の悲惨な事件も起きないのではないで
しょうか。否、起こさないためにも、そのような方向で本県民のライフスタイルや意識の変
革を求めていくべきではないかと思うものです。

 さらに申し上げれば、海に臨む本県ですが、海を使った教育に取り組んでいるのでしょう
か。教育関係者は、海は危険であるとの固定概念と自己保身から、頭から避けているので
はないでしょうか。私の年代が小学生のころは、学校にプールもなく、夏になると全校で海
に行って泳いだものです。どんな波が来ても、波に逆らわず浮くすべを、だれに教わるわけ
でもなく会得したものです。

 かつて戸塚ヨットスクールが話題になりました。問題のある子をヨットで鍛える過程で行き
過ぎたところがあったようですが、その教育効果は大きかったとも言われております。人は、
おぼれる者は藁をもつかむ、危ない目に遭えば全身全霊でもがく。次からは危険を事前に
防御するようになる。その実体験で会得したものは、生きるすべに通じるのではないでしょ
うか。要は子供たちを見守り、いざというとき助けることのできる指導者の存在や大人のあ
りようが問われているのではないでしょうか。

 どのような時代状況が押し寄せようが、堅実に生き抜く鳥取県民を育てるために、本県の
自然を一層活用した取り組みを進めていくべきと考える所以ですが、知事の御所見を求め
ます。

                                       知事の答弁




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